【完】約束=願い事
忘れもしない7歳の夏。
8月の暑い日だった。
海に行きたいというわたしの希望通り、
少し遠めの綺麗な海に連れて行ってくれた父。
煩いくらいに鳴きわめくセミたちが、
陽炎の間を忙しなく飛び回っていた。
「お父さん、お父さん!」
夏の陽気と、海の解放感。
肩甲骨まで伸びた、
真っ黒の綺麗な髪を自慢したくてわざとくくらずに入水していた。
『お母さんと同じくらいまで伸びたね。
まっすぐで柔らかくて綺麗な髪だ』
そう、父が愛しそうに撫でてくれるのが大好きだったから。
だから、
いつもと同じ様に言ったの。
誉めてくれる自慢の髪を弄びながら。
「夢瞳ね。
大きくなったらお父さんのおヨメさんになるの」
『そうだね、夢瞳』
苦笑混じりに答えてくれる父が好きだった。
でも、この時は……
「そうだね、圭織」