【完】約束=願い事
でも。
その願いは聞き入れられなかった。
悪夢は繰り返される。
嫌なことを忘れるために酒を飲み、
『圭織』と呼んで、わたしを抱く。
『夢瞳』と呼んで、わたしを傷つける。
いつしか抱かれる時の身体を貫かれる痛みは薄れた。
悲鳴をあげ続ける心も、どんどん何も感じなくなっていった。
抵抗をしないことを覚えて…。
そして、父が狂い始めてから3年の時間が過ぎようかという秋。
10歳のわたしを残して、
父は自殺した。
心が壊れていたわたしは、
それでも父が亡くなったことに涙を流していた。
複雑過ぎる思いの涙だった。
身寄りがないわたしは、
そのままいつの間にか大人に連れられて施設で暮らすことになった。
「夢瞳?」
ふいに、
誰かに声をかけられて記憶の世界から引き戻される。