【完】約束=願い事
過去に何度か、わたしは大和に襲われたことがあった。
それは、嘘を吐いて呼び出された時であったり、
夜中に手洗いに行くために部屋を出たときであったりした。
部屋に付いている鍵は、
こんな時は逆に邪魔なものとなり、
連れ込まれて閉められてしまえば逃げる手段は断ちきられる。
もうすでにこの時、貞操観念など持ち合わせていなかったわたし。
殴られるよりやり過ごす選択をする方が自然だった。
乱れた振りで
『ゴムを付けた方が感じるの』
とささやけば、簡単に乗せられたから妊娠の心配も皆無だ。
いたぶられた記憶はあるけど、可愛がられた記憶なんてコレっぽっちもないのに、
いつの間にか勝手に大和の女扱いで、笑いすら出そうだ。
そんなわたしたちを見る碧は大和と対照的に、射抜く様な物凄い鋭さでわたしを睨んでいた。
彼と同い年の碧は、
勝手に大和の彼女のポストを確立している。
だからわたしに近づく大和の行動への嫉妬の矛先を、わたしに向けてきているのだろう。
そんなに嫌なら最初から近づいて来なければ良いのに。
本当に意味が分からない。