【完】約束=願い事
いつもは1時間前に来た道を引き返して部屋に戻るわたし。
今日は、30分しか経ってないけど引き返していた。
『あれ?
夢瞳の方がなんだかおかしいよ』
あのすぐ後、
額に手を当てて照がそう言った。
『熱…かな?
今日は早く帰って寝ようか』
あやす様に優しく頭を撫でてくれたから、
熱なんてないけど
気持ちが溢れそうで結局何も言えなくて
すぐ引き返させられることになった。
なのに照は、
『もう少し散歩してから帰る』
と言ってあっという間に門から抜け出して暗闇に消えてしまった。
『濡れてしまうから階段から帰るんだよ。
今は職員は見回ってない時間だ』
と言って。
特別扱いの照は、
そんなことまで聞かされているのかな?
でもその言葉は本当で、
静まり返った廊下も階段も、
誰とも出会うことなく部屋に向かうことが出来た。