【完】約束=願い事

「手、出して夢瞳さん」


差し出すわたしの右手は渇ききらず腫れて血が滲んでいた。


手に落ちる消毒液。


「痛っ」



「夢瞳さん大丈夫?」


「…平気」

消毒液が沁みて身を引きたかったけど我慢。

わざわざ手当てをしてくれる彼に申し訳がないから。




でも
もう痛がる必要はなかった。

手早く包帯を巻くと
崇佑は器用に裂いて留めてくれた。



「ありがとう。
でもごめん。
わたし今返すお金がないわ」

出来れば借りは作りたくない。
といつも思う。

でも今回はただ親切にしてくれたことへの感謝の気持ちで出た言葉だった。




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