【完】約束=願い事


事情聴取が始まった。



嘱託医によるカウンセリングが行われる部屋。


机を挟んだ先には
残っていたという施設長がわざわざわたしの話を聞くために座っていた。



「吉井さん」

他人行儀に重苦しく呼ぶわたしの名前。

施設長の目線は手当てされたわたしの手に固定されている様に思えた。


「怪我は大丈夫ですか?
今日は大変でしたね」

心にもない心配と、表面だけの気遣い。


「はい平気です。
親切な方が怪我に驚き、手当てをしてくれました」


「そうですか」

感慨もなく、そうつぶやく施設長。

分かっていた雑な対応には苛々するどころか
笑いが沸いてくる。


「今日起こったことは、
当事者たちに詳しく聞きました。
本来はあなたにも聞くべきでしょうが、外にいたことも詳しく聞くのは後日としましょう」



「……は?」


くどくど聞かれることを予測していたわたしは
間抜けな声を出してしまった。


「あなたには別の話があります」


「………」


「実は―――」











話された内容は意外なものだった。




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