【完】約束=願い事
3日目
水曜日の昼過ぎ
施設の前
今日は、
昨日の帰りに実は走り去る碧を追いかけて家を知ったストーカーが
彼女の帰りに接触する。
という設定。
もちろん
わたしたちふたりは昨日同様、影で待機。
既に定位置についたわたしたちは
することもなく真田さんを見つめていた。
正門の前で何度も行ったり来たりを繰り返す彼。
彼の中では
もう劇は開始されてるのだろうか。
「今日も役に入りきってるよね、真田さん」
「うん。
まさかこんな才能があるとはね」
なぜか感心した、というよりは呆れた感じの照。
「こんな才能って…彼は役者の卵でしょ?」
「あぁうん。
でもまさか助けたときには思わないでしょ」
「確かにね。
でも、助けたって何を――」
そう聞きかけた時
タイミング良く碧が現れた。
正門へと歩いて来る途中、真田さんに気付いた様だ。
『まさか』
という目で立ち止まり、真田さんを凝視する彼女。
もう碧にとって彼は自分を害する恐怖のストーカーにしか映っていないのだろう。
動けない彼女の隣までゆっくり歩いていった彼は、
笑顔で何かを囁いた。
風に見えた。
すると彼女は
明らかに怯えて、間髪を入れずに施設内へと猛ダッシュで駆け抜けると
消えて行った。
すごいわ、真田さん…