わがままペット?〜あたしの飼い方。
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玲、今日は美亜の二十歳の誕生日だったよ。ケーキも用意したけど、美亜は帰って来なかった。
君がいなくなってからまだそんなに経っていないのに、美亜はずいぶん大人になった。いや、大人ぶるようになったのかな。ちっとも笑わない。
原因は俺だ。ごめん、玲。正直に言うよ。美亜が、どんどん君に似てくる。
最近では、ふとした表情を君だと思ってしまう。辛いんだ。まだ、俺だけ君がココにいない事を受け入れられない。
父親のクセに、娘の顔を見るのが辛いんだ。どうしたらいい?玲、もし君にこの手紙が届いたら昔の様に俺の背中を押して欲しい。
つまらない夫でごめんな。でも、君がいないと何も動かない。
もっと伝えていれば良かったよ、愛してるって。
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お店の小さなメモ用紙に、思った事をただひたすら書き綴った様な、まとまりのない手紙だった。
いかにもパパらしい。
「あたし、パパがもうママを忘れちゃったんだと思って…。」
そのメモ用紙をすっと前へ差し出した。
「そんな訳ないだろ。ただ、思い出すのが怖かったんだ。そのせいで、ミアにまで辛い思いさせたな。ごめん。」
あたしは言葉が出てこなくて、黙って首を横に思い切り振った。
パパはそっとソファーを立つと、あたしの隣に腰を下ろす。
「もう、大丈夫なんだ。玲も、ミアも、俺が大切にしたい家族だから、今ここにいるミアを守のが俺の役目なんだよな。」
「パパ…ありがとう。」
やっと絞りだしたあたしの声は、なんて脆いものなんだろう。そう思った。
「゛ありがとう゛は、清次郎に言わなきゃな。」