僕と平安貴族の五日間
僕は携帯を取り出し、
マキと僕の共通の友人であるハヤトに電話した。
隣で、雪冬が「なんだ!それは!」と
騒いでいるのを無視して、コール音に耳を澄ます。
「あ、もしもし、ハヤト?
レイカいる?
うん、
うん。
ちょっと、聞きたいことあって。」
レイカは今トイレに行っているらしい。
「あ、戻ってきた?
ありがと。
レイカ?
マキのマンション知ってる?
え?ちげーよ。
そんなんじゃねーよ。」
レイカ、本当に違う。
「え、マキ最近引っ越した?
そっか、まだ行ってないんだ。
じゃ、詳しくわかんないわけね?
わかった。
ありがとう。
だーかーらー、
そんなんじゃないって!!
現に、ここにマキは…」
まずい。マキがここにいるのに、
マキのマンションを聞くなんて、おかしい!!
「いや、ちがう!
ここに、マキは、いない!!
そう、レポートで、
ちょっと、ね?」
大学生の言い訳ワードベスト3にはいる『レポート』
は、かなり、使える。
僕は、電話を切った。
絶対、勘違いしている。
僕がマキを訪ねるだけならまだいい。
さっきのニュアンスではまるで
僕がマキをつぶしちゃったみたいじゃないか!!
僕は狼じゃない!!