僕と平安貴族の五日間


 僕のマンションに着くまでもまた大変だった。


 車、電車、エレベーター、エスカレーター、


 自転車に乗ったギャル。


 すべてが殿には珍しい。


 当たり前だ。


 僕は、たった30分で一万回も恥ずかしい思いをして、


 やっと、家に着いた。


「ほう、なんと狭い部屋だ…。」


 もう、僕に殿に言い返す気力はない。


 僕はソファになだれ込んだ。


 その時、僕の視界に写ってはいけないモノが写った。


『ハメ撮り 現役女子大生のガチセ●クス』


 ぎゃー!!


 殿は、雪冬だけど、マキだー!!


 僕は急いでそのDVDを押し込んだ。


 彼女のいない一人暮らしの部屋は


 たいていこんなもんだ。


 気兼ねなく、置ける、それが一人暮らしの醍醐味だ。


 それを押し込んだ際、


 昨晩観た、内容を思い出してしまった。


 ハッ。


 僕は殿の方を振りむいた。


 殿は慣れない現代生活への疲れのせいか、


 壁にもたれかかってクークーと寝息を立てている。


 さすが、貴族、その寝姿も神々しい。


 しかし、殿は男だ。


 足を開き気味で、スカートのすそが…


 ああああ!!


 おかしい。


 僕はこんなにも欲深な男だったのか?


 どちらかと言えば、


 今流行りの草食男子だ。


 サバンナでいうと、トムソンガゼルだ。


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