僕と平安貴族の五日間
「キャーーー!!!」
姉の悲鳴で目が覚めた。
条件反射で、僕は姉の大声を聞くと身構えてしまう。
「タケちゃん、お風呂場からみたい。
マキちゃんとはち合わせちゃったのかしら、
お姉ちゃんを見てきてちょうだい。」
か、帰ってきてたのか!!
僕は大急ぎで廊下を滑るようにして
風呂場へと向かった。
「おなご、背中を流してくれんか?」
「あ、アンタ、何言ってんの?
この、チカン!!」
あれ、チカンって言ったのは、まぎれもなく僕の姉。
背中を流せ、とすっぽんぽんで偉そうに主張しているのは…オトコ!?
精悍な体つきの男前が脱衣所に突っ立っている。
僕よりとっても立派なアレが偉そうに主張している。
間違いない、男だ。
「と、殿??」
「おお、タケル。
いま、そこのおなごに湯殿の世話をしてもらおうとな。」
そうだ。
平安貴族は自分で身の回りの世話をしないんだった。
あいつらは全部人任せなのだ。
しかし、なぜ、マキの体が男に…?
「ちょっと、タケル!!
こいつ、アンタの友達??
いい加減にしなさいよ!!」
僕は姉の剣幕にビクついてしまった。
「まぁまぁ、そう、おなごが大きな声を出すのではない。
よいではないか、私の背中が流せるのだぞ?町娘。」
殿、僕の姉ちゃんは僕が見知っている女という生物で
一番恐ろしいものなんだ。
喜んで背中を流しにくる町娘がいるもんだったら、
お会いしたいよ。
途中、小田急線で町田は通過したけど。
「と、殿ー!!とりあえず、背中は僕が流すから!!」
ああ、なんで!?
「もう!!なんなのよ!
タケル、アンタ、どうなるかわかってんでしょうね?」
ぎゃー!助けてー!!