僕と平安貴族の五日間
怒り狂ったゴジラ…じゃなくて姉になんとか引き下がってもらい、
僕も大急ぎで服を脱ぎすてて、風呂場に向かった。
殿は突っ立っている。
「殿…なんで男になっちゃったの?」
殿は鏡を覗き込んで、
「しかし、綺麗な鏡だな。
私の本来の姿はこれだ。」
今度こそ、マキはどこへ?
「さっきな、まだ女の姿だった時に、
不思議な気持ちになって、自分で湯をかけてしまったんだ。」
その調子で自分で体洗ってくださいよ。
「そして、元に戻った。」
いや、だから、マキは!!??
殿は早く体を洗えと言わんばかりに仁王立ちをしている。
「殿、髪の毛は洗うの?」
「あぁ、異世界に来てしまっているからな、
禊として、洗ってもらおうか。」
僕が資料なんかで知っている貴族の体つきは
下膨れのメタボってイメージだったけど、
殿の体は全く違っていた。
髪の毛は結うためか、肩下まであったけど、
顔だって、シュッとした男前だ。
体つきも僕よりだいぶしっかりしていて、
背も高い。
モテるわな、こりゃ。
「なんだ?これは、とてもいい香りがするな。
こんないい香はなかなか手に入らんだろう。」
「これ、シャンプーっていうんだよ。」
僕は殿を一通り洗い、
自分もチャチャッと洗った。
「あーいい湯だった。
タケルの母君に礼を言わなくては。」
ああ!そうだった。母さん!!
絶対、姉ちゃんがチクッてるからー、
どどどど、どうしよう!!
そんなとき、脱衣所から、声がした。
「ありー?
なんて私のパジャマがー?」
ああ、母さんが、二番目の姉貴のパジャマを拝借したんだ!!