僕と平安貴族の五日間
二番目の姉貴の声はまだまだ続く。
「てか、これ、タケルの?
タケル-!いるの?」
僕の頭は回らない。
殿は頭にタオルをのせて湯船につかっている。
「てか、これ、女モンの服…
え、タケル!!そ、そんなー!!」
僕はザバーっと素っ裸で脱衣所に出た。
「愛姉ちゃん!!ち、違うんだ!!」
二番目の姉貴は一番目ほど怖くはないが、
好奇心旺盛で、めんどくさい。
「ちょーっと、実家で彼女と混浴~?」
姉貴は目を輝かせて風呂場を覗き込む。
「タケルの姉君か?」
殿ー!
「ちょ、なにこれ…ヤバ…
マジ、イケメンなんですけど!!」
姉貴は目を潤ませながら、殿に見とれている。
殿はきっと、イケメンという意味が分かっていないのだろう、
盛大にきょと~んとしている。
姉貴の目線は明らかに殿の御立派なアレに注がれている。
さすがに殿は貴族なため、
このような町娘の不躾な視線には耐えられないらしい。
僕は殿に大きなバスタオルを渡すと、殿はホッとしていた。
それから、母さんをよび、
いつの間にか、
マキちゃんから、真木くんになった。(なぜ?)
きっと二番目の姉貴の画策だろう。
しかし、殿の身長は僕よりかなり大きい。
僕の部屋着がつんつるてんだ。
これもまた、貴族の美学に反するらしく、不服としている。
「あ、おじいさんは昔、とても大きかったんだよ。」
と、うちのばぁちゃん(初登場)。
僕もその話は聞いたことがある。
そこで、押入れから、二枚の少し、しっかりした浴衣を出した。
濃紺と灰色の紬で、殿は濃紺の方をご所望された。
さすが、貴族!!男前!!
濃紺の浴衣を着た殿を、
一番目の姉貴も含めて、うちの女たちは、
頬を染めて見つめていた。
あ、僕も何気にドキっとしたが。