僕と平安貴族の五日間
いくつかわかったことがある。
殿は、お湯、または、水をかけると本来の男の姿になること。
そして、日の入りとともにマキの体に戻ってしまう、
ということだ。
って、こんなに落ち着いちゃいられない。
僕の隣の布団には、濃紺の浴衣を着た、
マキが眠っていた…!!
僕は、小声で殿を起こす。
「殿!!
起きてよ!!
マキになってる!!」
殿はパチリ、と目を覚まして、
「まことじゃ!!」
と、ふとんをかきのけた。
はだけた浴衣の隙間から、マキのノーブラの…
くそ!煩悩退散!!
「殿!真木くんじゃなくなっちゃう!!
そこの服着て、
始発で家族に会わないように行っちゃおう!!」
外はまだ、そこまで明るくない。
うちの家族はみんな朝寝坊だ。
「しかし、タケルの母上に宿の礼を…」
しぶる殿に無理やり服を着せて、
僕は浴衣を二枚バッグに詰め込んで、
実家を後にした。