僕と平安貴族の五日間
殿が風呂から出てきたようだ。
僕の用意しておいた灰色の浴衣を着ている。
昨日、現代では自分のことは自分でやるの!!
と、口をすっーぱくして言ったから、
不服ながら、セルフサービスを飲んだらしい。
郷に入ったら、郷に従え!!
でも、殿はマキのままの姿だった。
あれ、何で?
「殿、なんでマキのまんまなの?」
殿は不思議そうに体を見つめている。
「まだ、外が明るいからかもしれぬ。」
ああ、そうか、時計を見ると、まだお昼の1時。
また一つ、殿のことがわかって、僕は少しうれしくなった。
って!!
これじゃ、付き合いたてのカップルじゃないか!!
「タケル、月が出てきたら、
もう一度、湯に入るぞ。」
僕は殿の声で現実に引き戻されて、
「あ、うん。わかった。」
と、答えた。
暗くなるまでの間、
僕はレイカはれっきとした現代っ子だということを
殿に説明した。
これはかなり根気のいる作業だった。
「でも、その、レイカ殿は
私のコトにほんに瓜二つ、なのだ。」
うーん、と僕は頭を抱え込む。
「まぁ、よい。とりあえず、また、湯につかるぞ。」
僕は、「あ、はい。」と、
いそいそと新しいバスタオルを準備した。
って、これじゃ、新婚の新妻じゃないか!!