僕と平安貴族の五日間
夫…じゃなくて、殿が風呂から出てきた。
「タケル。」
今度は声が低い。
男になれたようだ。
僕は殿の方に振りむく。
いつ見ても、いや、まだ、二度目だけど、
殿はイケメンだ。
「何?
やっぱり、6時すぎかー。」
僕は時計を見て言った。
「腹が減ったぞ。」
「あ…確かに。」
朝から何も食べてない。
「殿、和食がいいよね?」
殿は「和食?」と、聞き返した。
平安は和食、という概念がなかったから、
あたりまえだ。
僕は作るのが面倒だったので、
「近くの和風の居酒屋に行こう。」
あそこなら、個室だし。
僕は男になった殿と一緒に
夜の街へと繰り出した。