僕と平安貴族の五日間


 すると、コンマ3秒の速さで、僕らのいる個室のふすまが開いた。


 バシャァァーン!!


「「「お呼びでございますかぁ!!」」」


 女性店員がものすごい勢いで入ってきた。


 さすがの殿もビックリしている。


 3人とも目を見開いて、


 顔を赤らめて殿を見つめている。


「あ、あのー生中2つ…」


 僕が女子3人に気おされて、おずおずと言うと、


   チッ!!


 し、舌打ちィィー??


 今のって、え??


 お、女の子でも舌打ちするんだ…


 と、若干テンション下がり気味の僕に対し、殿は、


「ほれ、タケル、言うのだ。」


 と、僕に発言権をくれた。


 ようやく一人の店員がこちらを向いた。


 残りの2人は殿を鑑賞中だ。


 僕が注文を終え、3人の店員が個室から出ていくと、


 殿が言った。


「こっちのおなごは自分から


姿を表しにくるのだな。」


 いささか閉口気味に先に運ばれた、パフェをつついていた。


 そう、平安貴族の特に女性は男性に姿を見せないのが習わしだ。


 古典単語で『見る』とは、


 単に視覚的に見るだけでなく、


 結婚する、ちぎりを結ぶ、という意味もあるくらいだ。


「ちょっと、今のは強引過ぎたよね…。」


 僕も苦笑いだった。


 3人の女性店員は、僕の注文が終わったあとも、


 殿にあれやこれやと話しかけ、


 ここに居座っていたのだ。


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