僕と平安貴族の五日間
「俺の女に手を出しやがって!!」
男はテーブルをぶっ叩いてそう言った。
まさか!!
殿が知らぬ間に現代ですでに夜這いをしてたとは!!
僕は目を見開いて殿を見た。
そして、小さい声で確認する。
「どんなヤバい女に手を出したのさ!」
僕の頭の中では和服でマシンガンだった。
「はて?」
殿はまたもや盛大にきょと~んとなさっている。
「てめぇ!!
知らねぇとはいわせねぇぞ!!!」
男は殿に向かってツバを飛ばしながら叫ぶ。
「ちょっと、殿!!
本当にこの人の姐さんに手を出してないんだね?」
僕は殿に詰め寄った。
「しらん!
私はコトしか所望せぬ。」
殿はプーンとそっぽ向いている。
「殿ー!!
困るよ!!この人、その筋の人だよ!!」
殿が「その筋とは?」とか、僕に聞いていたけど、
僕は天使のような金剛力士像が気になって
チラッと見てみた。
「タケル、何か、様子がおかしいぞ?」
殿のご指摘通り、
金剛力士像はなんか、おかしい。
目がすわっている。
そして、殿ののみかけ(殿はビールがお口に合わなかった)を
飲んでしまったらしく、
空の中ジョッキを持っている。
金剛力士像は意外と酒に弱いようだ。
天使だから?
「ヒック!!」
…しゃっくりも可愛い。
僕はその瞬間、アニメのように豆電球がピコン!と光った。
いぶかしげに金剛力士像エンジェルを見る殿をよそに、
僕は隅によせたメニューを開いた。
強そうな酒を頼み、つぶせばいいのだ!!
僕は一縷の光を頼みにボタンを押した。