僕と平安貴族の五日間
襖が開いた。
バシャーン!!
この下り、何度やればいいのだろう。
この居酒屋の襖、壊れそうだ。
「ご注文はぁ…?
あああ!!てつちゃん!!」
注文を取りに来た女の子が口をあんぐり開けて
へべれけの金剛力士像を見つめている。
そういえばこの子、さっき殿にしつこくメアドを聞いていた子だ。
「てつちゃん!!
何してんのぉ!!」
女の子は僕らの個室に上がり込んで
へべれけのバッカス…じゃなくて
金剛力士像の肩をつかんでいる。
「うっうぅうーーー!!」
すすり泣く、天使。
読解力のない方のためにここで解説を入れるが、
金剛力士像、バッカス、天使、は同一人物である。
「だって…だって…
みゆきが、俺のこと、
もう、付き合えないって…
うぅぅっ…ー」
さめざめと泣く天使。
しかしいい声だ。
ビール半分でここまでつぶれてしまうとは。
「てつちゃん…」
と言いながら、殿の方をチラっと見る女の子、みゆき。
だめじゃぁぁん、てつちゃん!!
「ひっく…
メールで別れようだなんて
ひどいよぉぉぉ!!」
どうやら、みゆきちゃんはメールでてつちゃんに
別れを告げたらしい。
「お客さんがかっこいいから、とか
意味わかんないよぉぉ!!
ひっく!!」
確かに、意味分からない。
僕はそんな二人のやりとりを見つめていた。
その時、殿が立ち上がった。