僕と平安貴族の五日間
殿と出会って3日目
今日で殿と出会って3日目だ。
自分の寛大さと順応能力の高さに驚く。
「タケルー!
アサゲはまだかー?」
アサゲとは朝ごはんだ。
なんやかんやで自分のこともろくにしない貴族だ。
「はい、はい、はい…」
僕は、ご飯、目玉焼き、ウィンナー、
そして、
インスタントみそ汁をお盆にのせて
殿にふるまった。
「ほう、大したものだ。
ま、タケルの母君には劣るかな。」
そう、ケタケタ笑っているのはすでにマキの姿に
戻った殿だ。
「殿、今日、どうしようか。」
今日は日曜日。
僕は殿とこれからについて話し合おうとした。
「タケル、
やはりな、その…。」
殿は言いづらそうに、味噌汁を見つめている。
レイカに会ってみたいのだろうか。
「レイカに、会ってみる?」
僕は少し小さい声で言った。
殿はほっとしたような、かゆそうな顔をして、
「すまぬ。
確かに、レイカ殿はコトにそっくりなのだ。
しかし、その風貌だけでなく、
何かを感じたんだ…」
殿は神妙な顔をして言った。
「うん、わかった。
僕、ちょっと連絡してみる。」
「すまぬ。」
僕は携帯を持ってベランダへ出た。
先にハヤトに電話するためだ。
僕はなにがなんでも
殿を助けてやりたい。
でも、慎重に動かなければ、
そう思っていた。