僕と平安貴族の五日間
僕はなにが起こったのかわからなかった。
あの、温厚なハヤトが怒鳴っている。
殿は一応マキの姿なのに。
「マキ、何をしたんだよ。
レイカに、何したんだよ!!
昨日マキに会ってから変なんだよ!
マキの名前を出すとおかしくなる。
俺じゃない男の名前をうわ言みたいに言ってる。」
僕はハヤトをなだめるように言った。
「ハヤト、誤解だよ。
僕らも困ってるんだ。」
すると、ハヤトは納得するようにうなずいた。
「ああ、そうか。
お前らは裏で組んでるんだな?
もういい。出てってくれ!!」
そう言いながら、ハヤトは僕らを追い出そうと立ちあがる。
「ハヤト、聞いて。
違うんだ。」
ハヤトは聞く耳をもたない。
僕は殿のほうを見た。
殿はレイカをじっと見ている。
また話すかもしれない、と思っているのだろうか。
殿からもハヤトになんか言ってよ。
「ハヤト、みんなで乗り越えようよ!」
ハヤトはマキの腕をひっぱった。
「ハヤト、僕らにいつでも相談して。」
ドアが閉まりきる前にそう訴えるのが、精一杯だった。