僕と平安貴族の五日間


 僕らはまるで葬式の帰りのような空気で地下鉄に乗った。


「との…」


 今は話しかけない方がよさそうだ。


 家についても殿は黙ったまま。


 時計を見ると、針は六時を示していた。


 外を見ても暗い。


 だいぶ時間が経ったようだ。


 僕は早速、風呂の準備をして


「殿!お風呂、サッパリしてきなよ!」


 と、わざと明るい声を出して、


 殿にバスタオルと


 (僕が)アイロンをかけた浴衣を渡した。


 殿は力のない目で僕を見る。


 「すまぬな。」


 うあ!貴族が謝った!!


 やはり、ダメージはでかいらしい。


 ふと、ケータイを見ると


 メールあり、の文字が。


 ハヤトかもしれない。


 焦る気持ちで受信箱を開くと、


 サークルの友達だった。


 『今日、男組で飲むけど来いよ』


 まさか、行くわけないじゃないか。


 と、僕はケータイを閉じる。


 いや、待てよ。


 殿をうちの男どもに紹介して、


 今日はドカンと飲んじゃいますか!


 そうすれば殿も楽になるかもしれない!


 僕は友達に参加の旨をメールで送った。


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