僕と平安貴族の五日間

 マドンナはまるで何かの宗教画のようなたたずまいをしていた。


 話す前にふわりと笑う。


 浅岡の喉を鳴らす音が聞こえた。


「鶴巻 唯です。


 えっと、趣味はクラシックを聴くことです。


 忙しくて、ピアノはやめちゃったんだけど、


 社会人になって、ゆとりがでてきたら、


 もう一回、やりなおしたいな。」


 春の息吹が!


 デパートのロクシタンの前を通った時のような


 かぐわしさが、


 この個室を駆け巡った。


 男性陣全員、


 もちろん殿もふくめて、


 マドンナ、唯ちゃんに見惚れていた。


 僕が学内共同新聞で彼女を見たことがあったのを


 ぼんやり思い出していると、


   ボホン!!


 と、冬の嵐が春の息吹を消した。


 それが、4人目の女の子の


 咳だと気付くのに3秒かかった。
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