僕と平安貴族の五日間
殿、やりおる。
殿ぉぉぉぉぉ!!
僕は殿から後光の輝きが見えたような気がした。
殿は僕の番号を盗み見たらしい。
ヤエちゃんに見えないように
唇の端を上げた。
「殿、お姫様だっこっていうのは、
ヤエちゃんを持ち上げるんだ。」
と、僕は軽く小さい声で身振りを交えて殿に説明した。
殿がこんなに空気の読めるやつだったとは!!
ああ!殿!!
殿がヤエちゃんのほうへ歩いていく。
「ヤエ、こい。」
殿、ヤエちゃんと一戦を交えるのか?
なんていうくだらない冗談は置いといて、
今の殿はやばいくらいかっこいい。
ヤエちゃんはマドンナにむかって
勝ち誇ったような笑みを浮かべて、
殿の首に腕をまわした。
「きゃー!照れる―ぅ!」
ヤエちゃんはうはうはだ。
殿は(重かろう)ヤエちゃんにそんなそぶりを一切見せずに
持ち上げた。
ヤエちゃんの腕は殿の首と同じくらい、太い。
「はははは、ヤエも、おなごじゃの。」
と、至近距離で笑みを向けられたヤエちゃんは、
「はうー!」
と、殿の腕の中で気を失った。
マドンナがヤエちゃんを心配するふりをして
タクシーをすごい勢いで読んでいたのは言うまでもない。