僕と平安貴族の五日間
カラオケを出るころ、僕は声が全く出なくなってしまった。
「みさとはこれからどうすんの?」
煙草に流れるようなしぐさで火をつける浅岡。
すこしシワを寄せたみけんが野性味あふれる色気を醸し出している。
僕は固唾をのんでそんな浅岡たちの駆け引きを見守っていた。
というのも声が出なかったからだ。
「え?え・・・と」
みさとちゃんはというと今の今までぐいぐい押してきた浅岡が急に白々しくなったので慌てている。
「どうするの?」
そんな心理は知っている、とばかりに浅岡はさらにたたみかける。
「どうしたい?」
みさとちゃんは少し頬を赤くして、
「もっと、一緒に、いたい、な。」
と言って浅岡のそれはそれは広い胸に飛び込んだ。
僕は見逃さなかった。
浅岡の口元が悪魔の微笑みのようにゆるゆると上がったのを。
これからみさとちゃんは一晩かけて今まで知らなかったような
快感を浅岡からうけるのだろう・・・
そんな二人がピンクなネオン街に消えていくのを
僕は一言も声を出さずに見守った。