僕と平安貴族の五日間
そして、ためいきをついて僕は振り返った。
さて殿とマドンナをどうするか。
すんなりいくといいが。
「殿くん、私、飲みすぎちゃったかなぁ」
マドンナがふらふらとした足取りで殿の腕におっとっと、した。
「大丈夫か?唯?ほれ」
と、殿はマドンナを支えた。
殿が僕に助けを求める。
「 」
僕は声が出ない。
ちょっとまってて、今ケータイで打って殿に見せるから!
と、僕はケータイを取り出してピコピコしている間に。
マドンナが動き出した。
「殿、私、終電のがしちゃった。」
へへへ、と笑うマドンナ。
「シュ―デン?」
殿は聞き返す。
多分殿は終電を知らない。
「うん。帰れなくなっちゃった。」
ああああ!こんなときにあせってうまくボタンが押せない!
殿!殿!
「そうか、では宿に」
と、殿がピコン!と豆電球・・・
じゃなくて行燈(あんどん)の火がついたような顔をした。
殿!ばか!全然ナイスアイディアじゃない!
飛んで火に入る夏の虫だよ!
「うん、ここのちょっと行ったところに確か、あるの。
殿、連れてって?」
と、マドンナは殿を上目づかいでみて行った。
「よし、ではタケル。私は唯を宿においてから来る。」
そう言い残して殿とマドンナはピンク色のネオン街に消えていった。
殿ー!殿!
僕はケータイを握りしめながら戦慄した。
しかし、僕は知らなかった。
僕以外に戦慄している人がいることを。