僕と平安貴族の五日間
マキは僕の憐みの視線をかいくぐって言った。
「あぁ!!
こんなことしてられぬ!!
私には時間がないではないか!!
吉次、調べてきたんだろうな?
今はヘイセイという時代か??」
僕がもしクリスチャンだったら、
おお、神よ、なんて思ったかもしれない。
「マキ、
疲れてるんだね。
ちょっと、医務室に行こう。
ホラ、立てる?」
僕はマキにできるだけやさしい声で言って、手を差し出した。
マキは僕の手を取らずにずいぶんと
頭のわりにはしっかりとした足取りで立ちあがった。
「はやく、コトを探さねば…!!
ほら、行くぞ!!」
僕は差し出したままの手をそのままに、
マキの方を見た。
行くって、どこに!?
今、マキが行くべきところと言ったら、
病院の心療内科か、脳外科しかありえないのに。
僕はいきり立つマキに聞いてみた。
「あのさ、マキ、保険証、持ってる?」
「私はマキ、などという名ではない!!
私の名は、
藤原 雪冬だ!!」