僕と平安貴族の五日間
ピンクのネオンの元、
蝶のようにひらひらと舞っていくマドンナの花柄ワンピース。
僕はケータイを握りしめて、
眉毛をハの字にして二人のあとを追った。
なぜだかわからないが、尾行する刑事のように一本一本電柱に
へばりつきながら前に進んでいた。
二人は僕に気付いていない。
僕は次のめぼしい身を隠せるような電柱、もしくは看板を探そうと前方を見た。
すると、そこにはさっき合コンの一次会で途中棄権した石田がいるのである。
僕は石田に声をかけようとしたが、声が出ないことを思い出した。
仕方ないので、石田が隠れている電柱まで足を運び、肩をトントンとたたいた。
「うわぁ!!!
っこら!そんなに大声出したらあいつらにバレるだろ!!」
と石田は僕の口を押さえたんだが、僕は一言もしゃべってない。
すると、石田は勝手に語りだした。
「俺さ、初めて唯ちゃん見たとき、
今でも覚えてるんだよね。
こう、時間?空間が止まるってかんじでさ。」
そんな話より僕は肺に送り込む空気がほしかったので、
必死になって石田のいまだ僕の口を押さえている手をどかした。
そして、殿たちが入って行こうとする和風(マドンナ、なぜそこまで雰囲気重視だ)のラブホテルを指差した。
「あああ!!やばい!!
唯ちゃんが!!」
石田はようやく任務を思い出したようだ。
僕たちは二人のあとを追ってド派手な門をくぐった。
男二人であることも忘れて。