僕と平安貴族の五日間
殿と僕はザワついている方を見た。
カフェテリアは一応昼時なので混んでいる。
そんな中、人ごみがモーセの十戒のように波分けて僕らのテーブルまで道ができた。
「え、なに?何がおこってんの!?」
僕が目を凝らすと、
奇跡の道から一筋の光が漏れてくる。
すると、その光の源はなんと昨晩のマドンナだったのだ。
「マ、マド・・・唯ちゃん??」
僕は眉毛を八の字にしながら手をあげた。
「や、やぁ、元気かい?」
僕は昭和の演劇のようなテカテカした笑顔でマドンナにあいさつした。
まわりの奴らが「タケル、マドンナと知り合いかよー」という目で僕を見ている。
「タケルくん、こんにちは。
昨日はとっても楽しかった。」
マドンナは僕に微笑んだ。
陶器のような肌が日の光にあたって輝いている。
当たり前だがマキには気付いていない。
「あのね、殿、マキくんなんだけどね・・・
私たち・・・」
マドンナは空いている椅子に腰かけた。
とっても美しい動作だった。
「私たち、あのあと、ホテルに行ったの。
ほら、酔ってたじゃない?
だから、その、避妊、してもらえなかったのよ。」
え、ちょっと待った!!
マドンナは殿にピーーーをピー―――までしかしてないじゃないか!!
「え、ごめん、ヒニン?」
僕が聞き返すので、マドンナは恥じらって周りに聞かれるのをはばかるのに
僕の方へ顔を近づける。
いいにおいがする。
「そうよ。私も悪いんだけど・・・
とにかく、マキくんに連絡したいの。
アドレスかなんか教えてもらえるかな。」
マドンナの表情はパーフェクトだった。