僕と平安貴族の五日間
そういえばあの後、
「ねぇ、あのあと石田が唯ちゃんの様子を見にいかなかったかな?」
僕ができるだけ相手を刺激させないような声色でマドンナに言う。
「え?」
マドンナが怒ったような、戸惑うような顔をした。
「唯ちゃんを心配してたんだ、あいつ。」
マドンナは長いまつ毛を伏せて黙ってしまった。
「お主、自分にもっと素直になれ。
自分の仮面にこだわりすぎているのではないか?」
マキがぼそぼそと言った。
マドンナは大きな瞳に真珠のような涙をためて小さくため息をした。
殿のような口調で言われたのでマドンナも何か考えているようだった。
そんな時、
「唯ちゃん!」
マドンナの名を呼ぶ声が聞こえた。