僕と平安貴族の五日間


 僕は思い出した。


 あぁ、そうだ。


 あの忌々しいレポートの内容!!


 あれは藤原雪冬の生涯を踏まえたレポートだった。


 藤原雪冬とは平安時代の貴族で、


 在原業平が伊勢物語のモデルとされ、


 雪冬は源氏物語の裏モデルだったのでは、


 と最近の学会で騒がれているのだ。


 とにかく、好色な男で、欲の限りに生き、


 政治がらみの陰謀で殺される、という


 平安のダメ男の代名詞である。


 そして、相当の男前だったことでも知られている。


「マキ、わざとなのか?


わざとそんなこと、言ってるのか?」


 僕はマキの人間性を疑った。


「そうか、天狗が言っていたのはこの事だったのか…


この体のおなごの名がマキというのだな?」


 今度は天狗が出てきた。


 僕は持っていたノートパソコンを開き、


 レポートの入ったUSBを差し込んだ。


 マキの書いたレポートから天狗の話を見つけるためだ。


「おお、なんだ、この白きものは?


吉次、でかしたぞ!!」


 白きものって…。


「マキが生まれたのは何年?」


 僕は試しに聞いてみた。


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