僕と平安貴族の五日間
「加持祈祷をしにな。
私の世では三井の評判がよかったんだ。」
なるほど。琴菊姫が見つかるようにお祈りしてたのか。
「あ、で、どうしてその三井寺に?」
僕はあらためてきいた。
「三井での祈祷の帰りに天狗に会った。
だから、もう一度祈祷をしに行きたいのだ。
堂々巡りだからな。」
殿がため息をつきながら言った。
「そうか、何か手掛かりがありそうだね。」
僕は謎が解けそうな気がしてきて興奮してしまった。
「殿、行こう!琵琶湖に!
いざ!三井!!」
教室では例の教授が出席を取り始めていたが、
「教授!すみません、ちょっと彼女が体調が悪いみたいなので
医務室に連れて行きます!」
僕はマキの二の腕をつかんで言った。
机から教科書やプリント、ペンがあわただしく落ち、
みんなが僕らに注目していた。
それでも構わなかった。
いざ、琵琶湖!
あ、殿は鎌倉時代の人じゃないのにな、
と、一人苦笑しながら僕は荷物をまとめた。
マキ、殿が不安そうに僕を見ている。
「行くよ。」
僕は秦野教授に頭を下げて教室を出て言った。