僕と平安貴族の五日間

 僕は息をひそめて携帯を握りしめる。


「-----」


 なにか聞こえる。


 レイカの声だろうか。


 しかし、聞こえる女性の声はレイカより高いような気がした。


 その声は祈るように何かを念じているようだ。


 僕は通話中のままの携帯を席にまで持って行って殿に聞かせてみた。


「殿、これ、聞こえる?」


 殿は静かに携帯を耳にあてた。


 その瞬間、殿がはっと息をのむのがわかった。


 どのくらいの間、殿はそうしていただろう。


 それは長かったような、ものすごく短かったような気がした。


 殿は携帯を僕に差し出した。


 目に涙を浮かべている。


「タケル、やはり、私たちは三井に行くべきだ。


私が三井で直前にうけた加持祈祷と同じものをとなえておる。


まりがいなく、コトだ。」


 僕は携帯の通話を切って、


 充電が残り少ないのを確認した。
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