僕と平安貴族の五日間

殿、旋風


 僕らは滋賀の大津駅の近くに宿をとった。


 とにかく、殿をお風呂に入らせて、マキから殿に変身してもらう。


「タケル」


 殿のよく通る声がして、僕はラップトップから顔を上げた。


「ここから三井は近いのか?」


 僕は画面に目を移して、近い、と答えた。


「では、さっそく行きたいのだが。」


 新幹線の中で明日の早朝で、という話だったのにな、と、思った。


「うん、いいよ。いこっか。」


 殿はほっとしたような、でも、不安がまだある感じだった。
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