僕と平安貴族の五日間
「ごめんくださーい」
僕はちょっと間抜けな声を出してしまったが、
中からは想像通りのお坊さん、があらわれる。
「はい、なんでしょうか。」
その人は静かに声をだした。
40代くらいの男性で日本人形のような顔をしていた。
なんというか、見事に左右対称で坊さんをしてるのにはもったいないほど整っていた。
「あの、-----」
僕が声を出そうとすると、殿が元気よく声を出した。
「崔兼(さいけん)ではないか!!
奇遇だな!!」
殿はずかずかと草履を脱いで座敷に上がった。
崔兼と呼ばれたお坊さんは小首を傾げた。
「申し訳ございませんが、
わたくしは崔兼では・・・」
本当に申し訳なさそうな顔をする。
殿はぎょっとした顔をして、
「なに!お主、私に加持祈祷を下したではないか!
崔兼、お前の父上にも懇意にしていたではないか。」
そのお坊さんは、はっとした顔をして
「もしよろしければこちらへお越しください。」
と、僕たちに奥を案内した。