嫌いになるまで傍にいて


「う…寒ぃ…」


外に出たら雪が降っていた。


どうりで寒いわけだ…


「湯川くん薄着だから」


そう言って、椎名は自分のしていたマフラーを外し、俺に差し出した。


「ほら、貸したげる」


意外な行動にまた俺は驚いて


…さっきから驚いてばっかだし(笑)


ってか、椎名の方が寒いだろ。


華奢な体が特に寒そうに見える。


「あたしは寒いのも好きだから」


そう言う椎名を無性に抱きしめたい衝動にかられる。


……違うだろ。


飢えてるみたいじゃん、俺。


だけど、マフラーは受け取る訳には行かなくて


俺は椎名の手を握り、自分のジャケットのポケットにその手をつっこんだ。


「これがいい」


嫌がられるかも、と内心ヒヤヒヤしながら起こした行動だったけど


椎名は何も言わなかった。





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