ペットはご機嫌ななめ
ペットの事情 3
両親が亡くなってから、あたしを引き取ってくれた叔父夫婦に、これ以上頼るわけにはいかない。
子どものいない叔父夫婦は、あたしを実の子のように可愛がってくれたけれど…だからこそ、独り立ちして、安心してもらいたかった。
だけど、勢いでサインした書類を満足そうに眺めたお姉さんの言葉に、あたしは早くも後悔した。
「あ。言い忘れたけど、契約は、お客様側からしか解消できないからね。つまり、あなたが飼い主を気に入らなくても、飼い主があなたを気に入れば、契約は、続行されるわけ。それから、ペット契約をした以上、必ず1度は仕事してもらう。そういうことでよろしく、優ちゃん」ええっ?やっぱりやめる!と、あたしが手を伸ばすより一瞬早く、書類を手にしたお姉さんが、
「派遣先が決まったら連絡するから」
と、書類をひらひらさせて遠ざかるのを、呆然と見ていた。帰り道、落ち込んでいる自分を慰めた。ペットの派遣料は1ヶ月に60万。
そんな大金を払ってまで、あたしをペットにしたいなんて思う奇特な人が、そうそういるはずない!そうだよ、落ち着け、あたし。
飼い主が見つからなければ、派遣会社も諦めるしかないだろうし。
…だけどそれから3日後、派遣先が決まった。
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