tone
「……ギターを弾くと、

聞こえてくる音色が、

心と一体化するんだ。」

「………うん。」

「歌音と一緒にデュエットした時、

飛び出すくらい音が弾んでた。」

「……あたしもよ。」

「歌音がいなくなった時、

なかなか弾けずにコードが切れた。」

「………そうだったんだ。」

「音色は正直者。

俺達の心の中で生まれて、

正直に表してくれる。」


「中途半端な気持ちでやってたら、

音は響かず、墜落しちゃうよね。」


「俺達の願いはtoneの復帰だ。

でも、一番キレイな音色を響かせるHAZUKIに


無理をさせたら、音色が調和しなくなる。」

「………天才、ボーカリストだもんね。」


「歌音ちゃん。

無理し過ぎないでね。

音色が、歌音ちゃんの気持ちを伝えて、

僕に伝わる前に。」

「………うんっ!!」

あたしは奏ちゃんに飛び付いた。
優しく、腕を回す奏ちゃん。

耳元から囁かれたメロディ―は

今のあたし達を表してくれて、

素敵な子守唄みたいだった。

大丈夫。

きっと四人なら、

最高のbandが作れるよ。



今からでも遅くない。

3年分の想いを、

みんなに届けようね??

空はそろそろ赤い光が差し込み、
公園では暖かい家を目指す子供が手を繋いで帰っていった。


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