tone
「……元太、楽しそうね。」

「そうだね。
ドラム、大好きだから。」

一番最初に
【バンド組もうぜ!!】
って言ったのは
元太だからね。

「でも、
本当にバカだったな。」

そう言いながら、
演坂さんは哀しそうに
歌音を撫でる。

「あの喧嘩をした後、
いやあの告白だっけ??
本当に歌音が、
いなくなったんだから。」

「……そうだよね。
せっかく気持ちが繋がったのに
またフリダシから。」



【奏ちゃん。
ごめん、先帰ってて??】

【え、どうかしたの??】

【うん。ちょっと
李亜と会わなきゃなんないから。】

【演坂さんと??】

【うん。ちゃんと
仲直りしなきゃね??】

【夜遅くなる??】

【ん~??
分かんないから残してて。
すぐすませるから。】

【そう、気を付けてね。】

【当たり前じゃん。
アタシは詩月 歌音だよ??】


そう笑って、
僕に暖かいキスを残して


【大好きだからね、
ずっと奏ちゃんだけ。】

夜の闇に
入ったんだ。


疑いなんて
なかった。

【必ず帰ってくるから。】

それしか
なかったから。

歌音ちゃんが
言ったんだから。

でもどうして、
歌音ちゃんは消えたんだろ??

ある山で瀕死の状態で
発見されたのは分かる。


でもどうして
記憶を無くして
孤児院で別人として
生きてたの??

分かんない。

近い歌音ちゃんが、
たった、いや
3年の長い月日で
すごく離れてしまった。


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