tone
ガチャ


『お邪魔しま~す……。』


『そんな事言わなくていいよ。』


と含み笑いする奏ちゃん。


『昔のあたしは言わなかったの?』


普通なら言うでしょ、他人の部屋なら。


『うん。


いつもバンッ!!とドアを開けて飛び付いてきたよ。』


『え//!?』


あたし、そんな大胆な事してたの!?


スゥ………



“奏ちゃん!!”


“歌音、お願いだから静かにドアを開けてよね”

“ねね!!


もう新曲出来た!?出来た!?”

“分かった分かった!!


お願いだからくっつくのはヤメテ”


“あ//………”


『………しょうがないじゃん。』


『え?』

『だって奏ちゃんの曲聴きたかったからつい……。』


『歌音………!?』

『……ってあれ?


何で急に……?』


『思い出したの?』


『いや、何となく口にしただけ……。』


『スゴいよ!!

こんなに早く思い出してくれて!!』


とギュウとあたしを抱き締める奏ちゃん。


『ちょ奏ちゃん……』


スゥ………









“置いてかないで!!”

“歌音………”


“あたしを一人にしないでよ………”


“………うん。


分かった、一人にしない”


“ホント?”

“うん。

僕が傍にいる”


傍にいる……


この時のあたし達が分からなかった事が、


今のあたし達には、


どれだけ大切な事が分かった気がする。


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