tone
そしてあたしは

隅にある本棚の方に連れて行かれた。

そして、

「ここが秘密の部屋の入り口。」

「えっ!?」

嘘・・

ここが秘密の入り口?

あたしがあんぐり、口を開けてると

「まあ見てて。」

と奏ちゃんはある一冊の本を抜きだした。

そしてそれをカチャンと本棚に戻すと、

ガチッ

歯車同士が重なり合う音が聞こえた。

ガガガガガガ

ゆっくりと伝わる振動。

そして、




「うわあ・・・。」

秘密の扉が、

今、解禁された。

中には様々な楽器があった。

ピアノをもちろん、

ギター・ベース・ドラム・キーボード・マイク・・・

そして周りには数え切れないほどの資料。

床にはばらばら散乱した楽譜や雑誌。

「ここで毎日、練習してたの?」

「ああ。父さんが昔使ってた部屋。

防音効果は抜群。

今でも十分通用する部屋だよ。」

と昔を懐かしむような口で言った。

そうか、

あたしがいなくなってから活動してなかったってけ?

実際、toneは活動休止と言うニュースはあたしも聞いた。

何かその時違和感を感じたけど、

あれは自分がtoneのメンバーだったからなんだ。

そしてあたしは足元に挟まった雑誌を拾った。

「‘音楽界に衝撃を与えた新星バンド・tone。

その存在は今、日本で絶大な人気を誇ってる・・。’」

「それ、デビュー同時に出されたインタビュー。」

「顔は?顔は見せたの?」

すると彼は笑いながら、

「な訳ないじゃん。」

と言った。
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