tone
飛び出した先には雨が待ってた。

傘を持たず飛び出したあたしを不審に見る視線を振り切るように、

あたしは宛もなく歩き出すんだ。

ドラマよりもリアルだったキスシーン。

李亜はそっと瞳を閉じて、

奏ちゃんは驚いた瞳を見開き、

静かに唇を重ねていた。

『………っどうして?』


あたしじゃ物足りなかった?

アタシなんか眼中になかった?

どうして?どうして?

why………?


冷たい雨に打たれてもいい。

歌がうまく歌えなくてもいい。

ただお願い……









時を、戻して――


ねぇ、奏ちゃん。

だから貴方は拒んだの?

最後の最後までこの曲を流す事を拒んだ奏ちゃん。

あたしの言葉を聞く奏ちゃんは、

悲しみと虚しさを混ぜた瞳で必死に訴えてた。


“その曲は…止めよう”


奏ちゃんが李亜とキスをした。

それがこんなに辛いことだなんて初めて知りました。


< 88 / 133 >

この作品をシェア

pagetop