tone
……………………………
結局李亜には届かなかった。

あたしと李亜は似た者同士だからきっと電源を切ってる。

だからあえてあたしは留守電を残さない。

だって李亜は優しいからきっと奏ちゃんの事を諦めるでしょ?

恋にそんな不器用な優しさはイラナイ。

欲しいのは真っ直ぐな想いだけ。

だからあたしは正々堂々と李亜と戦う。









あの堅苦しい“詩月"に戻るわ。


幼い頃から過ごした別荘。

抵抗なしとか言ったら強がって聞こえるから言わない。

だから持ってきたのは携帯とiPod、強いて言えばコート。


おば様達には迷惑にならないようにmailした。

奏ちゃんは何か演奏してたからドアの隙間に手紙を差し込む。

本当にドラマのワンシーンみたいね。

もしもこれが続くと、きっと向こうからは愛しき声が………。











『ミツケタ。』


『………え?』

ドラマの見すぎなのかもしれない。

たまにはニュースも見なさいって言うから見た方がいいのかな?


『………歌音ちゃん。

勝手にいなくなるなんて反則だからね。』

でも最後まであなたはあたしの期待を裏切る。


『……奏ちゃんこそ、あたしが後ろを向いてるときにギュってしないでよ。』


後ろからじゃなくて前から。

いつでも前もって来てた奏ちゃんらしく、あたしを出迎えてくれました。


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