tone
そして奏ちゃんは口を開く。









───だけど声は届かない。


『え?

もう一回言って、奏ちゃん。』

そう振り向くと、









愛しい君の姿はもう、幻覚のように消えた。

『……奏ちゃん?』

分かってる。

この次に誰が来るのか。

“──奏矢はもういない。"

“嘘、つかないでよ。"

“だから俺の傍に来て。"


………嫌。

嫌、嫌。

分かってるよ。

君が誰なのか、

何も分からないあたしを陰ながらに支えて、

いつも傍にいてくれました。

でもそれを愛と名付けられなくて、

結果的にはあなたを傷つけてしまった。









『…………ジュ…ン。』


“───カノン"

ごめんなさい、


それはもう、あたしの名じゃないから。


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