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『…………。』


長い、夢を見た。

孤児院での普通な暮らし。

いつも子供の面倒を見てた。

子供好きなあたしにとっては苦痛なんかじゃなかった。

でもその時、あたしはこの生活を“異様”と感じ取ってたんだ。

他の友達みたいに携帯なんか持てない。

遊びになんかいけない。

普通の生活がおくれてないんだ、あたしは。

勝手に被害妄想してた。

だけどこの生活に戻った今、









『─────奏、矢。』

目の前にある愛をどう受けとればいいのか迷ってる。

目の前にありすぎて、分からない。

触れていいのか分かんない。

でもあたしは、そっと触れた。

少しくせっけな黒髪。
目が悪いとか言いながらあまり掛けない眼鏡。

昔もこうだったのかな?


奏ちゃんはきっとモテてたんだろうね。


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