tone
『………いつも、そうやってた。』

ビクッ!!

振り向くと、カーテンの裾を持った李亜がいた。

『歌音はいつも奏矢君に優しく触れた。

何にも戸惑わずにね。』

苦しげな表情で涼しげに言う李亜に、

あたしはただ、視線を向ける事しか出来ない。


『………李亜は、奏ちゃんが好きだったんだ。』

今度は李亜が、驚く番だった。

『……記憶、戻ったの?』

『一部分だけ。

李亜と奏ちゃんがキスした事件だけね。』

ねぇ、李亜。

あなたは今何を考えてる?


『…………歌音は羨ましかった。』


『…………。』

『最初は奏矢君と歌音の事、応援してた。

素敵な歌声を持つ、あたしの大親友と

優しく見守る親友の幼なじみ。

まるでドラマのワンシーンを見てるようだった。』

そうだよね。

初恋の相手が幼なじみってちょっとベターだ。

でもあたしは“音崎 奏矢”と言う人物に惚れたんだ。

幼なじみとか、今更関係ない気もする。

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