年下がダメな理由
そう。どうやら、安子。また、やらかした様だ。
辺りを見回したが、安子の姿は見当たらない。
自分のミスに気が付き、雲隠れしたのだ。
全く・・・。困ったものだ。
ため息が出る・・・。

前回は、誤字のまま、入稿して掲載してしまった。
接続詞が違っているだけでも、意味合いが、変わってくる。
《は》を《を》に間違えていたのだ。
しかし、幸いにも、クライアントの配慮で事なきを得たのだが・・・。

今回は、ヤバイ・・・。
《静かな生活》というキャッチコピーが、
《豊かな生活》になっている。
あれほど、更正には気を付けるように、念を押し言っていたのだが。
また、間違えるとは・・・。

とりあえず、俊也は気を利かせて連絡してくれたらしい。

しかし、気が重い・・・。

あ~、最悪!!!!!
なんで、いつも上手く行かないのだろう・・・。
私ばっかりさ・・・。
神様の、バカ・・・。

頭を抱えながら、受話器を手に取った。
クライアントへ謝罪&説明。
慣れてはいるが、気分は最悪。
番号をプッシュ。03.....。

その時、上からバインダーで頭をコツかれた。

「葉子さん。」

見上げると、佐々木明が笑っていた。

「連絡済みです。ほら。」

私のほうに、訂正してある原稿を見せた。

『あっ。でも、どうして・・・。』

「丁度、印刷の方に連絡することあって。ついでに、直接掛け合ってみたんです。そしたら、間に合いましたよ。この埋め合わせは、今夜夕飯おごりで。」

よかったぁ~。つい、笑顔になってしまう。

『サンキュー。奢りますとも。じゃ、あとでね。時間は7時でいい?』

「はい。じゃ、下のロビーで。」

急死に一生って言いすぎかもしれないが、助かった。

なんだか、最近すごく頼りになる。

ちょっぴり、見直した。

・・・。

そういえば、見た目も、背丈も、センスも良くなった。

しみじみ。

そう思った。








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