年下がダメな理由
案の定。

結局、帰ってこなかった。潤也・・・。

おかげで、昨夜は寝付けず。
寝不足。
目の下のクマ。
むくんだ顔。

年齢は隠せない。

朝食を済ませて、仕事に向かった。
足が重い。

頭の中には、昨日の光景がグルグル回っている。

できることなら、忘れたい。
見なければよかった。
後悔が、どっと押し寄せる。

潤也に、恋した私がバカだった。

・・・・・。

仕事も手に付かない。
後ろから、同僚の佐々木明の声がした。

「葉子。疲れてるだろ。」

手には、ドリンク剤。私がいつも飲んでるやつだ。いつも、やさしい。なんだか、ホッとする。

『ありがと。なんか、最近すぐ疲れちゃってね。年だね。』

明は、呆れたように葉子を見た。

「がんばりすぎだよ。無理すんなよ。」

私の肩を叩いて、自分の席へ戻って行った。

『はぁい。』

なんだか。
誰かに、頼りたくなるのは、ダメだと思っていても。

弱音を吐きたい。
誰かに頼りたい。
抱きしめてほしい。


自分のプライドさえ、ジャマしなければ何事も悩まずに済むのかもしれないけど。


きっと、明を好きになっていれば、こんなに悩まないで済んだのかもしれない。



・・・・・。


そう。


潤也を忘れるため。

きっと、良い方法。

私の中の年増の心は、ロクでもない考えをし始めた。

《35歳の私に、結婚相手を見つけられる保障は無い。仕事も出来て。収入も安定していて。しかも、私を好きでいてくれている。かなりの好条件じゃない?》

・・・・・。


入社してすぐ、年増のお局様が嫌いだった。
でも、今はすでにその年齢も過ぎた。

私には、時間が無い・・・・・。

恋をしている場合じゃない。

結婚相手を探せる年齢じゃない。



手にしたドリンク剤の中身を全部飲み干した。

・・・・・。

決めた。


私の残された選択肢。



そう。






彼と付き合う事。



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