星の降る線路の上で
第一章 ~50分の1の少女~
昨日までの激しい雨が嘘のように、夏が始まっていた。
真っ青に洗い流された空はどこまでも深く澄み渡り、一片の雲も見つける事が出来ない…
銀色の太陽から降り注ぐ陽光は山々の稜線をはっきりと浮かびあがらせ、原色同士の鮮やかなコントラストの中に、新しい季節を歓喜するセミ達の声が響き合う。
周囲のもの全てが眩しい生命の輝きに満ちていた…夏への扉を開け、その向こうに一歩を踏み出そうとしていた。
色褪せたままの三崎を一人、小さな無人駅のプラットホームに置き去りにして…
『おかけになった電話番号は、現在使われていません…』
落ち着いた声で繰り返される現実を、三崎はただ黙って受け止めていた。
もう何度、その番号にダイヤルしたのだろう…
着信記録から、アドレス帳から…最後は自らの記憶から、確かめるように一つ一つ番号を押し…そして待った。
ひょっとして何度とダイヤルするうちに何かの間違い…時空のどこかで奇跡が起こって回線が繋がり…その向こうに失われた懐かしい声が聞こえるのでは?
でも、そんな事はありあえない…もうその番号はこの世界に存在しないのだから…
番号を捨てたのは彼女自身の強い意志であり覚悟であり、結論でもあった。
彼女は三崎の知らない世界で、新しい人生を歩き始めているのだ…
それに、もし彼女が電話に出たとして…何を言えばいい?
全てが許される魔法の言葉など、どこを探しても見つかりはしない…
三崎はディスプレイに目をやり『加入者ナシ』の文字を確認すると、落胆とも安堵とも取れる溜息をつき携帯をポケットに押し込んだ。
電車を待つ以外、する事が無くなった三崎は、仕方なく陽炎に揺れる線路の先をぼうっと眺める…
赤錆びた線路の向こうに見えるたくさんの黄色い花が目に沁み込み、知らずのうちに目頭が熱くなっていた。
真っ青に洗い流された空はどこまでも深く澄み渡り、一片の雲も見つける事が出来ない…
銀色の太陽から降り注ぐ陽光は山々の稜線をはっきりと浮かびあがらせ、原色同士の鮮やかなコントラストの中に、新しい季節を歓喜するセミ達の声が響き合う。
周囲のもの全てが眩しい生命の輝きに満ちていた…夏への扉を開け、その向こうに一歩を踏み出そうとしていた。
色褪せたままの三崎を一人、小さな無人駅のプラットホームに置き去りにして…
『おかけになった電話番号は、現在使われていません…』
落ち着いた声で繰り返される現実を、三崎はただ黙って受け止めていた。
もう何度、その番号にダイヤルしたのだろう…
着信記録から、アドレス帳から…最後は自らの記憶から、確かめるように一つ一つ番号を押し…そして待った。
ひょっとして何度とダイヤルするうちに何かの間違い…時空のどこかで奇跡が起こって回線が繋がり…その向こうに失われた懐かしい声が聞こえるのでは?
でも、そんな事はありあえない…もうその番号はこの世界に存在しないのだから…
番号を捨てたのは彼女自身の強い意志であり覚悟であり、結論でもあった。
彼女は三崎の知らない世界で、新しい人生を歩き始めているのだ…
それに、もし彼女が電話に出たとして…何を言えばいい?
全てが許される魔法の言葉など、どこを探しても見つかりはしない…
三崎はディスプレイに目をやり『加入者ナシ』の文字を確認すると、落胆とも安堵とも取れる溜息をつき携帯をポケットに押し込んだ。
電車を待つ以外、する事が無くなった三崎は、仕方なく陽炎に揺れる線路の先をぼうっと眺める…
赤錆びた線路の向こうに見えるたくさんの黄色い花が目に沁み込み、知らずのうちに目頭が熱くなっていた。