星の降る線路の上で
一週間前、三崎は全てを失った…
失うのは一瞬で、さよならの一言も無かった。
心の中に無秩序に広がり続ける空虚から逃れたくて、気がつけば時刻表を片手に電車に乗り込んでいた。
行き先なんか決めていない…とにかく遠くへ…
その一心で何度も電車を乗り継いで気がつけば、この小さな無人駅にたどりついていた。
車窓から見えた何気ない夏の風景…
そこに身を置く事で、僅かでも失ってしまったものの事を忘れようとした…
誰もいない場所で、新しい自分が見つかるかもしれないと微かな期待を抱いた…
…でも、気がつけばこの小さな無人駅で、自分自身が風景の一部になっていた。
三崎は額の汗を拭うと、タイメックスの腕時計に目をやる。
時刻表の到着時間に間違いが無ければ、もうとっくに電車に乗っているはずであった。
「遅い…な」
三崎は隣のベンチに無造作に置いてある旅の相棒…時刻表の本に手を伸ばそうとするが、その行為が無駄である事に気づき止めた。
電車の到着時間を過ぎてから何度となく時刻表を手に取り眺め、そこに記されている到着時間に間違い無い事を確認していた。
「どうなってるんだ…」
誰に問い掛けるわけでもなくそう漏らすと、恨めしげに空を見上げた。
眩しい太陽が嘲笑うかのように、容赦なく彼に灼熱の光を浴びせ掛けている。
セミ達の重なり合う鳴き声が耳にうるさくまとわりつき、苛立ちを増幅させた。
先程拭ったばかりの額にはもう汗が流れ出してきて、それが狙ったように目に入り思わず苦痛の声を上げる。
このまま行けば、間違いなく彼の体の水分は全て汗に変わってしまうだろう…
何一つ動かない現状に業を煮やしたように首を振ると、三崎はベンチから重い腰を上げた。
失うのは一瞬で、さよならの一言も無かった。
心の中に無秩序に広がり続ける空虚から逃れたくて、気がつけば時刻表を片手に電車に乗り込んでいた。
行き先なんか決めていない…とにかく遠くへ…
その一心で何度も電車を乗り継いで気がつけば、この小さな無人駅にたどりついていた。
車窓から見えた何気ない夏の風景…
そこに身を置く事で、僅かでも失ってしまったものの事を忘れようとした…
誰もいない場所で、新しい自分が見つかるかもしれないと微かな期待を抱いた…
…でも、気がつけばこの小さな無人駅で、自分自身が風景の一部になっていた。
三崎は額の汗を拭うと、タイメックスの腕時計に目をやる。
時刻表の到着時間に間違いが無ければ、もうとっくに電車に乗っているはずであった。
「遅い…な」
三崎は隣のベンチに無造作に置いてある旅の相棒…時刻表の本に手を伸ばそうとするが、その行為が無駄である事に気づき止めた。
電車の到着時間を過ぎてから何度となく時刻表を手に取り眺め、そこに記されている到着時間に間違い無い事を確認していた。
「どうなってるんだ…」
誰に問い掛けるわけでもなくそう漏らすと、恨めしげに空を見上げた。
眩しい太陽が嘲笑うかのように、容赦なく彼に灼熱の光を浴びせ掛けている。
セミ達の重なり合う鳴き声が耳にうるさくまとわりつき、苛立ちを増幅させた。
先程拭ったばかりの額にはもう汗が流れ出してきて、それが狙ったように目に入り思わず苦痛の声を上げる。
このまま行けば、間違いなく彼の体の水分は全て汗に変わってしまうだろう…
何一つ動かない現状に業を煮やしたように首を振ると、三崎はベンチから重い腰を上げた。